フリーランスの債権回収

このページではフリーランスの債権回収について解説します。

フリーランスにとって代金を払ってもらえない問題は生活にも直結するので、極めて重要な問題です。しかしながら、フリーランスはサラリーマンのように労働法規制で守られておらず、債権回収にあてる人的・物的資源も不足しがちです。そのため、知識を身に着けて自衛策を図ることが重要になってきます。

フリーランスの取引の特徴

フリーランスの取引といっても、その債権の規模・内容はさまざまですが、フリーランスの取引については概ね次のような特徴がみられます。

1.取引金額が少額
2.契約書がない、もしくはあっても実態に合ってない

1.取引金額が少額

ソフトウェアの開発等、比較的取引金額の大きいフリーランスの契約もありますが、法人間取引と比べると取引金額が小さいものが多いのが特徴です。

債権額が小さいと債権回収の利益とコストが見合わず、債権回収にあたってネックとなりがちです。

2.契約書がない、もしくはあっても実態に合っていない

フリーランスの取引の場合、そもそも契約書がないかあっても不十分なひな形を使っていて契約内容の実態に合っていない契約書になっているケースがありがちです。

法務がしっかりした企業との取引では、企業側が契約書を用意していることも多いですが、フリーランス側に契約交渉の資源が不足しており、相手側に極端に有利な契約書となっていることもままあります。

フリーランスが代金を払ってもらえないケース

代金を払ってもらえないケースとしては概ね次の2つに分類できます。

1.相手にお金がない場合
2.取引相手がフリーランスの役務、商品に不満、瑕疵があると主張している場合

1.相手にお金がない場合

お金がない相手から債権回収をするのは、困難です。取引先が倒産しなければ、粘り強く時間をかけて回収をすることも考えられますが、人的資源の不足しているフリーランスでは回収に時間をかけるよりは次の収入源を見つけた方が早いので諦めがちになります。

このようなケースでは、そもそも取引相手選びに問題があるのであり、事前の取引先の与信調査や代金の支払い条件が重要になってきます。

2.取引相手がフリーランスの役務、商品に不満、瑕疵があると主張している場合

相手にお金がないわけではなく、取引相手がフリーランス側の落ち度を指摘して代金を支払わないことがあります。フリーランス側に債務不履行や瑕疵がなく、取引相手が理不尽なクレームをつけているだけなら、回収の見込みは十分あります。ここで重要になってくるのが、契約書の存在と中身です。

フリーランスが代金を取り損なわないために重要なこと

フリーランスが代金を取り損なわないためには事前の予防が重要になります。具体的には取引相手の選定と契約書の整備が重要です。

1.取引相手を慎重に吟味する

支払能力に不安がある相手との取引は基本的には避ける必要があります。若干怪しいような場合は、後払いではなく、例えば初回取引は前金にするなどの自衛策をとっておくことが重要です。

一方で、発注側から見た場合、フリーランスは信用に乏しいこともあり、支払い時期について不利な条件を求められがちです。実績を客観的にアピールできるような材料を用意して、自身の信用を高めておくことも重要です。

2.契約書を整備しておく

債務不履行や瑕疵などが問題とされた場合、契約書がないと「言った。言わない。」の話になりがちで、債務の履行の法的な立証が難しくなり、債権回収の難易度が上がります。

また、契約書があっても、債務の特定が十分でなかったり、実態に合っていない内容になっていると、やはり代金を請求する側が不利な立場に置かれてしまいます。

そのため、契約の実態にあった契約書をあらかじめ整備しておくことが重要になります。

契約書できちんと債務の内容が特定されていれば、契約外の無償サービスの要求に対しても、契約書を根拠に拒否することができます。 

債権回収の手段

債権回収の必要が生じたときに、債権者が講じる法的な手段は次のとおりです。

1.内容証明郵便等による催告

債権回収において、いきなり法的手続に入ることは少なく、まずは書面で支払いを促すのが一般的です。これを法律用語で催告といい、内容証明郵便を利用することが多いです。

連絡を無視されているか、既に支払わない態度を示している債務者に対する効果はさほど期待できませんが、弁護士から内容証明郵便で催告をした場合には、債務者が法的手続に進むのをおそれ支払がなされるケースもあります。

メリット:コストが安い、すぐにできる
デメリット:強制力がない

2.支払督促

支払督促は、簡易裁判所を利用する簡便な手続きです。書類審査のみで完結し、仮執行宣言付が付されれば強制執行が可能になります。貸金返還請求や家賃・管理費の請求等でよく利用されています。

裁判所への出頭は不要ですが、相手方から異議を出されると通常訴訟に移行されてしまいます。支払督促では裁判所の管轄が相手方の住所地になるので、異議を出され通常訴訟に移行すると相手方の住所地によっては裁判所が遠方になるリスクがあります。

メリット:裁判所に出頭しなくてよい、強制執行が可能
デメリット:裁判所の管轄が相手方の住所地になる、相手方から異議を出されると通常訴訟に移行する

3.少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる簡易裁判所の手続で、原則1回の審理で終わり、その日のうちに判決が言い渡されます。1回の審理で終結するのである意味シビアな手続でもあり、証拠がたくさん必要になるような複雑な事案には向いていません。通常訴訟に比べると数的にはあまり使われておらず、弁護士の関与も1割以下と少ないです。

メリット:1回の審理で終わる、強制執行が可能
デメリット:被告が希望すれば通常訴訟に移行する、裁判所の管轄が相手方の住所地になる、事案が複雑な案件には使えない

4.民事訴訟

債権回収の最終手段は通常の民事訴訟になります。勝訴判決を得られれば強制執行が可能になり、相手方と裁判上の和解が成立した場合も和解調書をもとに強制執行が可能になります。必要に応じて事前に仮差押え等の民事保全も行います。契約書で専属的合意管轄の定めがなければ、原則として債権者の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起することができます。

メリット:原則として裁判所の管轄を義務履行地(債権者の住所地)にすることができる、強制執行が可能
デメリット:手続きに時間と費用がかかる、知識・経験がないと自力で行うのは困難

5.その他の法的手続

その他の法的手続としては、簡易裁判所の民事調停、弁護士会のADRの手続などがあります。

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